『倒産続きの彼女』
あらすじと感想
この記事では、新川帆立さんの小説『倒産続きの彼女』のあらすじと感想を書いています。
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『倒産続きの彼女』は前作『元彼の遺言状』の続編で、『元彼の遺言状』で大活躍だった剣持麗子の後輩弁護士・美馬玉子(みま たまこ)が主人公となっています。
もちろん麗子も登場しますよ!
【以下ネタバレあり!】
Contents
『倒産続きの彼女』登場人物
美馬 玉子(みま たまこ)
山田川村・津々井法律事務所に勤務する弁護士。
祖母と二人暮らし。
津々井先生
玉子と麗子の上司。
山田川村・津々井法律事務所の創設者で、コーポレートチームのボス。
私の中でのイメージは小日向文世さんです。
川村先生
山田川村・津々井法律事務所の創設者で、倒産チームのボス。
インテリヤクザのような外見で怖い。
哀田先生
川村先生の部下で、手下のようにこき使われている。
痩せ型の長身で、瘦せこけたヤギみたいな見た目。
近藤 まりあ(こんどう まりあ)
ゴーラム商会の経理課社員。
今まで勤務した3社がすべて倒産し、現在勤務しているゴーラム商会も倒産の危機に瀕している。
只野 愛子(ただの あいこ)
ゴーラム商会の総務課長。
西洋人形をそのまま太らせたような顔立ち。
只野 理江(ただの りえ)
愛子の姉。愛子が大学生の時に死亡。
安西(あんざい)
ゴーラム商会のコンプライアンス担当役員。
幸元社長
マルサチ木材の社長。
幸元 耕太(さちもと こうた)
マルサチ木材の専務。社長の息子。
私の中でのイメージは杉野遥亮さんです。
高砂 義宗(たかさご よしむね)
高砂フルーツの三代目社長。
山峰 顕(やまみね あきら)
新事業のために高砂社長が会社に引き入れた男。
赤坂 宗男(あかさか むねお)
玉子の祖母の婚約者。
『倒産続きの彼女』あらすじ
第一章 羨望と下克上
激務で有名な「山田川村・津々井法律事務所」に勤務する弁護士・美馬玉子(みま たまこ)。28歳。
両親は20年前に他界し、祖母と二人暮らしをしています。
玉子に似てちょっとぶりっ子な祖母が、ある日「結婚する」と言い出しました。相手は“ムネちゃん”。もう指輪ももらっているようです。
まだ元気だとはいえ、80を過ぎている祖母の世話をどこの誰ともわからない爺さんに任せられないという気持ちと、自分の結婚もまったく考えていないわけではないけれど、今の生活に満足しているのに…というもやもやした気持ちを抱えながら出勤した玉子を待ち構えていたのは、事務所の一つ上の先輩弁護士・剣持麗子でした!
玉子ははっきり言って麗子が嫌いです。
優秀で美人で苦労知らず。上京して奨学金を借りながら学校を卒業した自分とは違う人種のような気がして、一緒にいるとみじめな気持ちになるのです。それに麗子がボーナスの額に文句を言って数ヶ月も仕事を休んだ後、何食わぬ顔で復帰したことも気に入りません。
『元彼の遺言状』で麗子が休んでいた時、仕事の負担が増えて大変だったのは玉子だったようです。
小説『元彼の遺言状』のあらすじと感想【ネタバレ】をCHECKする
そんな玉子が麗子と一緒に取り組まなければならなくなった仕事。それが倒産しそうなアパレル会社・ゴーラム商会から寄せられた内部通報の調査でした。
その内部通報とは、
【倒産続きの同僚】
経理部の「近藤まりあ」という社員が過去に勤務していた会社がすべて倒産している。
彼女が不正行為をして潰して回っているのではないか。
迷惑なので処罰してほしい。
というもの。
案件を持ち込んだ津々井先生(ゴーラム商会の顧問弁護士)は「さしずめ、連続殺『法人』事件でしょうか」などと上手いことを言ってます。
早速近藤まりあの履歴書を取り寄せた玉子。
22歳 | 小野山メタルに入社 |
24歳 | 小野山メタルが破産申請 |
マルサチ木材に入社 | |
26歳 | マルサチ木材が民事再生申立 |
高砂フルーツに入社 | |
29歳 | 高砂フルーツが破産申請 |
ゴーラム商会に入社 | |
31歳 | ゴーラム商会が倒産の危機 NEW! |
確かに近藤まりあが過去に在籍していた会社3社すべてが、入社後2~3年で倒産しています。経理という職種は一貫しているとはいえ、業種がバラバラなのも気になります。
近藤が倒産に無関係だと分かるまでは調査しなくてはならないので、まずは現在の勤務先であるゴーラム商会の倒産原因を調べてみることにします。
ちなみに、会社が平常運転をしている時には津々井先生率いる玉子たちのコーポレートチームが仕事をしますが、倒産となると同じ事務所内の倒産チームが担当することになります。
倒産チームのボス・川村先生に話を聞きに行く玉子たち。
同じ事務所とはいえ、チームが違うので簡単には情報を教えてくれません。川村先生のことを、弁護士としては優秀で話せばわかる人だと麗子は言いますが、とにかく高圧的で見た目が怖い人物のため、玉子はとにかく下手に出て機嫌を取ります。その甲斐あって、川村先生は部下である痩せこけたヤギみたいな哀田先生にゴーラム商会を案内させると言ってくれました。
そんな中、玉子の祖母が心筋梗塞で倒れ、しばらく入院することに。
翌日、玉子は麗子とともにゴーラム商会へ行き、総務課長の只野愛子に話を聞きます。西洋人形をそのまま太らせたような顔立ちの女性です。
ゴーラム商会が経営不振に陥った一番の原因は、フランスのランダール社と結んでいた主力商品の独占販売契約が期限切れで切れてしまったことでした。
もともとは再契約しなくても自動で契約が更新されるような条項が盛り込まれていたのですが、一年前、独占販売料の改定で新しい契約書を取り交わした際、ドラフト段階までは入っていた自動更新条項が抜け落ちていたというのです。
契約書原本を作成したのはランダール社。受領した原本の文言をきちんと確認したかどうか、当時の法務担当者たちはもうみんな辞めてしまって連絡も取れず、よくわからないようです。
只野さんは、よくわからない契約書関係の仕事を、経理課の近藤まりあに相談に乗ってもらいながらなんとかこなしていたと話しました。
でも、契約が切れたことに気づいた時点で顧問弁護士である津々井先生に相談していれば、再交渉を試みるとか、ランダール社を相手に訴訟を起こすとか、何かしらの方策はあったはずです。
「相談していれば、うちは助かったかもしれなかったんですか…?」と固まる只野さん。法務関係に詳しい社員もいなく、会社の上層部も都合の悪い報告は聞き入れてくれなかったため、顧問弁護士に相談するという選択肢はなかったようです。
哀田先生はそんな只野さんに「今からでもベストを尽くして必ず助ける」と言い出しました。弁護士が「必ず」なんて言っていいのか…と思う玉子。また、会社が助かるために上層部で進めていた事業売却の情報も、“ここだけの話”などと言って話してしまいました。
第二章 あちらこちらの流血
只野さんの口から近藤まりあの名前が出てきたこともあり、内部通報の調査は続行することに。
確かに、ゴーラム商会の弱点を突いたランダール社のやり口は、ゴーラム商会側に協力者がいないと無理に思えます。
近藤のSNSには、彼女の年収ではとても買えないようなブランド品や、高級フレンチに出入りしている様子、海外旅行などの写真が投稿されていました。実家が裕福というわけでもなさそうです。となると、ランダール社に協力する見返りに報酬を得ていたと考えられるのでは…?
近藤本人に直接話を聞くことにした玉子たち。
とはいえ、内部通報の件とは言えないので、契約書管理体制の見直しに対する社員へのヒアリングとして場を設けます。
過去に働いていた会社が3社とも潰れたことをあっけらかんと話す近藤。
総務課長の只野さんは近藤に相談に乗ってもらっていたと話していましたが、近藤の方は只野さんとはそんなに親しくないと言っています。
近藤のヒアリング中、祖母が入院している病院から電話がかかってきたため、一度席を外した玉子。隣の小部屋(=ゴーラム商会では解雇の話をする時に使っているので、“首切り部屋”と呼ばれている部屋)で電話を済ませ、元の部屋に戻ります。
近藤の後は只野さんのヒアリングを予定していました。
しかし時間になっても只野さんが来ません。玉子が部屋を出てみると、先ほど入った首切り部屋の扉が薄く開いているように見えました。近寄ると、扉の下の隙間から血が流れ出ており、中には首から血を流して倒れている只野さんの姿が…。
警察によると、只野さんの死因は刃物で喉を切られたことによる乏血性ショック。凶器の刃物は只野さんのそばに落ちていました。
翌日、麗子に呼び出され事務所へ行った玉子。倒産チームのボス・川村先生が玉子のことを探していると言うのです。
でも、川村先生の執務室は真っ暗。不在であれば施錠されているはずの鍵も開いています。機密情報を扱う弁護士の執務室が無施錠なんておかしい…と恐る恐る中に入った玉子が目にしたものは…
背中にナイフが刺さってうつ伏せに倒れている川村先生😢
死んでいるかと思ったらまだ生きていました!救急車を呼びます。
事務所に駆け付けた津々井先生は「川村先生がゴーラム商会の件で掴んではいけない情報を掴んだために処分されそうになったのではないか」と恐ろしいことを言っています。
第三章 同じくらい異なる私たち
意識はまだ戻らないものの、なんとか一命をとりとめた川村先生。
只野さんの死が週刊誌で『首切り部屋の首切り事件』として騒ぎ立てられ、ゴーラム商会の倒産も時間の問題となる中、そのマーケティング部門を「テトラ貴金属」という会社が買い取ってくれることになりました。まとまった現金が手に入るので、少し延命されることになります。
実は川村先生は刺された当日、このテトラ貴金属の社長に会いに行ったようです。相手方にも弁護士がついていることが多いため、交渉相手に直接会いに行くのはご法度なのですが…。何かよっぽどの事情があったのでしょうか。
津々井先生が言うには、テトラ貴金属という会社は、色々な会社を吸収してできたツギハギの、変な会社なのだそうです。いつになく歯切れの悪い津々井先生。
玉子たちは近藤が過去に在籍していた3つの会社の倒産原因を調べることになりました。
小野山メタル
近藤が最初に就職した会社。中価格帯の使い勝手のよい金物メーカーとして地位を築いていましたが、内部の不正会計が発覚。取引先から契約を切られ、破産。
小野山メタルの強みであった金属の仕入部隊は、テトラ貴金属に引き取られます。
高砂フルーツ
近藤が3番目に就職した会社。ずっと堅実な経営をしてきましたが、新事業のために呼び入れた山峰という男によって過剰な借入れを繰り返した結果、莫大な借金を抱えて破産。
ここでも、流通部門の職員ら十数名がテトラ貴金属に再就職しています。
ちなみに高砂社長と山峰は経営者同士の交流会で知り合いました。誰か背の高い男が二人を引き合わせたということですが、麗子が話を聞いた山峰は、この男が誰だったのか覚えていないようです。
マルサチ木材
近藤が2番目に就職したマルサチ木材は現在民事再生中。他の2社と違って会社が消滅してしまったわけではなく、借金を返済しながら事業を継続している状態です。早速会社を訪ねてみることにしました。
マルサチ木材の専務であり、社長の息子である幸元耕太(私のイメージでは杉野遥亮)の話によると、マルサチ木材が潰れかけた原因は近藤まりあの知り合いだという商社の人に紹介された「ノフィ」という外国人であることがわかりました。海外から木材を仕入れる際に仲介してくれていた男ですが、突然連絡が取れなくなり、マルサチ木材は多額の不良債権を抱えることになってしまったのです。
近藤の名前が出てきて鼓動が早くなる玉子。さらに、民事再生に伴い従業員をリストラする際、在庫管理をしていた優秀なスタッフたちを部署ごとまとめて引き取ってくれた会社が「テトラ貴金属」だということも判明。
他社の事業や人員を吸収しながら会社を大きくすることは珍しいことではないけれど…と玉子が考えていると、マルサチ木材の幸元社長が只野さん死亡の件で警察に連れて行かれたとの連絡が。
警察の聴取を終えた社長が言うには、実は近藤まりあの知り合いの商社の人というのは只野愛子で、2週間前、その只野さんから「ゴーラム商会に来てほしい」と連絡があったと言うのです。
あの日、只野さんから呼び出された幸元社長は、首切り部屋で会社の再生計画の進み具合を訊かれます。「あと一年ほどで借金を返して手続きを終了できそうだ」と答えると、今度は「私の姉を覚えていますか?」と訊いてきました。両親を早くに亡くした只野さんは、年の離れた姉を親代わりに育ち、その姉は只野さんが大学在学中に亡くなっています。が、社長には何のことかわかりません。
社長と向かい合った只野さんはジャケットの胸ポケットからナイフを取り出し、そのまま自分の喉を掻っ切りました。
返り血を浴びた社長。状況がわからずパニックになりながらも、自分が犯人にされることを恐れ、血が付いた服は全て脱ぎ、無事だったコートを着て会社を出ました。人気のない公園で顔や首を洗い、紳士服店で新しい背広一式を購入し、汚れた衣服は自宅近くの川に沈めたと言います。
社長が本当のことを話しているのなら、只野さんは姉のことで社長に恨みがあり、殺人犯に仕立て上げるために自殺したのでしょうか…。
社長は只野さんの姉のことを知らないようでしたが、社長の妻は覚えていました。妹と二人慎ましく暮らしていた只野理江という事務員のことを。
3社の倒産原因を洗い出した結果、只野さんの姉が小野山メタルとマルサチ木材で働いていたこと、近藤と只野さんが小野山メタルでも勤務時期が被っていたことが判明します。
只野理江 (姉) |
小野山メタル | マルサチ木材 | ||||
只野愛子 (妹) |
小野山メタル | 商社 | ゴーラム商会 | |||
近藤まりあ | 小野山メタル | マルサチ木材 | 高砂フルーツ | ゴーラム商会 |
倒産した会社と近藤まりあ・只野さんの関係が徐々に明らかになっていく中、入院していた玉子の祖母が亡くなります。
第四章 トラの尻尾
告別式には、祖母の婚約者だった赤坂という老紳士もやってきました。早すぎる別れに戸惑い、心の整理がつかないと言います。
赤坂は、せめて彼女が幸せな人生を送ったのだと思いたいから、本人に訊いても教えてくれなかった東京に出て来るまでのことを教えてほしいと玉子に頭を下げてきました。突然現れた婚約者に良い感情がなく、お見舞いの時間もかぶらないように避けてきた玉子はこのお願いを突っぱねることしかできませんでした。
そんな中、ゴーラム商会の倒産がいよいよ確実になります。只野さんの衝撃的な死が取引先等への不安を煽り、最後の引き金になったことは間違いありません。
さらに、マルサチ木材の再生計画もダメになりそうだと判明します。社長が只野さんの件で警察に呼ばれたことが原因で殺人犯との噂が取引先にも知れ渡り、経営が危なくなっているとのことでした。
只野さんは会社を潰すことに並々ならぬ情熱を注ぎ、生き残りそうなマルサチ木材とゴーラム商会を確実に倒産させるために自殺したのではないか…
しかし、自殺という手段を選ぶのは腑に落ちない様子の麗子。どうせやるなら会社が確実に潰れたことを見届けた方良いのでは?これまで10年以上かけて色々やってきたというのに、最後だけ死に急ぐなんておかしいと。
確かに。玉子はふと、祖母の婚約者からもらった名刺に目をやります。それを見て思わずフリーズ…
株式会社テトラ貴金属
代表取締役社長 赤坂宗男
やだ、ムネちゃんってテトラ貴金属の社長だったの?!
翌日、赤坂に会いに行く玉子。
テトラ貴金属は赤坂が50歳を過ぎてから立ち上げ、生きているうちになるべく大きくしたいと思ってやってきた会社だそうです。そのためには一から事業を育てるのではなく、外から、それも経営が傾いている会社から買い取るのが得策ということで、そういう企業をとあるコンサルタントから紹介してもらっていたと言います。
その名は「トラ」。表向きは投資家集団ですが、裏の顔は経済ヤクザのような感じ。ただあからさまな違法行為はせず、グレーゾーンを狙っている集団のようです。赤坂も詳しくは知らないようでした。
玉子はトラの情報と引き換えに、祖母の過去について話すことにします。
玉子の実家はもともと関西で干し柿を作る会社を経営していました。しかしある時から事業が立ち行かなくなり、両親が自殺。保険金は下りたものの借金を全額返せたわけではなく、祖母と二人、夜逃げ同然で隣県へ引越します。
お嬢様育ちの祖母が慣れない仕事をし、節約して少しずつお金を貯めて、玉子の大学進学を機に上京。玉子が弁護士になってから生活水準は格段に上がったものの、幼い頃の貧乏根性でほとんどを貯蓄に回していました。もっと祖母のために使えばよかった…と玉子は後悔しているのでした。
トラのことは玉子も聞いたことはありませんでしたが、津々井先生の歯切れの悪さを思い出し、津々井先生は何か知っているのかもしれないと思いました。
今回の連続倒産はトラが裏で糸を引いているのではないか。会社を倒産させて優良部門を売りさばく。生者の命を吸い上げる寄生虫のようなやつら…。
小野山メタルと高砂フルーツはもうなくなってしまい、ゴーラム商会も倒産は免れないでしょう。でも杉野遥亮のいるマルサチ木材(ちがう)はまだ間に合います。麗子と相談し、近藤まりあに再度話を聞いてみることにしました。哀田先生に頼んで近藤との面談の段取りを組んでもらいます。
しかし当日、時間になっても近藤が来ません。仕方がないので、麗子とともに近藤の自宅で待つことにしました。自宅に帰ってきた近藤は玉子たちを見て驚いた顔。面談の約束なんて聞いていないと言います。
麗子は近藤に向かって全部話すよう諭します。
一社目の小野山メタルでは真面目に働いていた近藤。上司に指示された仕事をしていただけでしたが、いつの間にか不正会計を手伝わされていました。会社が倒産して解雇され、途方に暮れているところに声をかけてきたのが只野さんだったと言います。
毎月30万渡すから只野さんの言う会社に勤めてほしいと。そしてマルサチ木材に入社。只野さんとはたまに食事に行く程度の付き合いでしたが、社長が木材の仕入れに困ってピリピリしているという話をしたら、ノフィを紹介されました。
次に就職したのも、只野さんに指定された高砂フルーツ。ここでは近藤は何もしていないと言います。確かに倒産の原因になった山峰と高砂社長を引き合わせたのは背の高い男だという話でした。
次も只野さんの指示でゴーラム商会へ入社。入った会社が次から次へと倒産するので、さすがに何かに巻き込まれていることを感じざるを得ない近藤でしたが、毎月もらえる30万が惜しくて黙っていました。只野さんからはお互いに知らない者同士のフリをしようと言われていたようです。
只野さんが近藤に就職するように指示してきた会社は、すべて只野さんの姉・只野理江が勤めていた会社でした。姉のことを覚えている人がいるかもしれないので只野さんが自分で全部に就職することはできず、軽薄で頭の悪そうな近藤を利用していたのだと思われます。
問題は、どうして只野さんがそこまで会社の倒産にこだわるのか…。もし姉の復讐なら、会社ではなく社長とか、個人になるのではないか…
そんな中、川村先生の意識が戻ったと連絡が入ります。川村先生もやはり赤坂に会いに行っており、トラの存在に気づいたようです。
只野さんの自殺原因が明らかになれば、マルサチ木材の社長への嫌疑は晴れ、倒産の危機から救えるかもしれない。玉子がそう思ったところに、耕太から連絡が入りました。
社長が遺書を残していなくなったと。
第五章 命の値段
幸元社長が行くとしたら、ゴーラム商会の首切り部屋…
玉子が駆け付けると、そこには両手に出刃包丁を握った幸元社長が。自殺した自分の両親と重なり、どうにか社長を止めようと飛び掛かる玉子。思わず両親への思いを口走ります。すると、
「美馬先生のご両親は、立派な死にざまでしたよ」
え、誰…?と思ったら、そこには包丁を握った哀田先生の姿が…!
哀田先生はトラの一員だったのです。知りすぎてしまった玉子を処分するために追いかけてきました。赤坂のことも処分したと言っています。
哀田先生ににじり寄られ絶体絶命かと思ったその時、ヒールの音を響かせ颯爽と登場した麗子!
麗子の登場で劣勢になり、トラのことをペラペラと話し出す哀田先生。玉子の実家の干し柿店を潰したのもトラだと言います。只野さんが会社を4つ潰したいと言った時に相談に乗ったのもトラ。もっとも只野さんにはやり方を教えただけで、ほとんど一人で実行していたようです。近藤に渡していたお金も自分の貯金を崩していたのだとか。哀田先生がやったことといえば、高砂フルーツの社長と山峰を引き合わせたことくらいだったようです。おまえだったのか!
只野さんの姉・理江は就職氷河期で就職できず、ずっと非正規社員でした。只野さんが潰した4社はすべて理江を冷遇し、首を切った会社だったのです。繰り返し職を失った理江は心を病んで自殺。
只野さんが復讐したかったのは特定の人物などではなく、正社員と非正規社員という身分制そのものでした。
哀田先生がトラの一員だということを只野さんは知らなかったようです。
玉子はそんなことよりも親の仇である哀田先生に復讐しようと包丁を手に飛び掛かります。咄嗟に玉子を止める麗子。哀田先生は玉子に向かって突進。はずみで包丁が玉子の脇腹に刺さります。
・
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玉子が目を覚ました時には一週間が経っていました。
只野さんの死は自殺だと警察が判断したことで幸元社長の嫌疑は晴れ、マルサチ木材はなんとか助かりそうです。
あの日、あの場から逃げ出した哀田先生は、後日富山県の山林で遺体となって発見されました…。ちなみに川村先生を刺したのも哀田先生です。
近藤のことを内部通報したのは役員の安西でした。会社が潰れることで株主たちから責任を追及されるのを避けたかった安西は、倒産の原因が色々あったと見せかけるために近藤が不正をしているかのような内部通報をしたのです。
さらに只野さんを自殺に追い込んだのも安西でした。倒産の原因が色々あったことにしようと内部調査をしている時に、近藤の倒産続きの職歴と只野さんとの繋がりに気づき、二人が手を組んでいるのなら首謀者は只野さんだと、只野さんを脅したのです。「会社を潰そうとしていることはわかっている。自首しなければバラす」と。
安西にドン引き。(私が)
実家が倒産しているので、これまで倒産関係の仕事は何となく避けてきた玉子でしたが、今回の働きを見た川村先生から倒産弁護士に向いているとお墨付きをもらい、倒産チームに誘われました。どうする?!玉子!
『倒産続きの彼女』感想
本筋の『倒産続きの彼女』に関する事件の他に、冒頭の合コンのシーンとか、おばあちゃんとのやり取りとか、玉子の麗子への感情の変化とか、読み応えのあるシーンがたくさんあって。
特に、最初は麗子のことが嫌いだとはっきり言っていて、麗子のブサイクな表情を覚えておこうとか、欠点を見つけるたびに嬉しくなるとか言っていた玉子が、ふとした瞬間に麗子の魅力に触れ、だんだん好きになっていくところとか、かつて社会の底辺にいた自分は今でも不公平や不条理が許せないと思っていたはずなのに、倒産した会社の記述の中に「非正規社員を解雇」と書かれていても当然だと思ってしまっていたことに気づいたり。とにかく玉子の心の動きが響きました。
麗子も、もう調査は終わりってなってからも、玉子が調べようとしていることに付き合っていました。それは『元彼の遺言状』の時に他人の価値観も尊重してみようと思ったからで、それをちゃんと実行していたのです。二人とも成長してる。もっと見守りたい。
あと、玉子は合コン相手の医者のことを「太い身体、太い首の上につぶれたカエルのような顔がのっている、ブサイクな男」とこき下ろしながらも、偶然再会した時にかけられた言葉が気に入ってその後も会う約束などをしていたから、まさか付き合うのかな?と思っていたら、マルサチ木材の専務(社長の息子)に会った途端「その顔は理知的だった。高くて細い鼻が印象的で、目元には人懐っこい笑みが浮かんでいる」と評していたので、あ、こっちだわってw
マルサチの社長が警察に連れて行かれた時もすぐに引き返したり、再生計画がダメになりそうな時にあんなに頑張ったのも、専務がイケメンだったからですw
でもわかります。杉野遥亮みたいな専務だったら頑張っちゃうよね!
最後、麗子が玉子の頭を蹴り飛ばすシーンがあるんですが(どんなシーンだよw)、後日麗子はちゃんと玉子に謝ります。
『元彼の遺言状』で、麗子が犯人に頭突きしたのを覚えていますか?麗子はそれが不格好だったことを気にしてボクシングジムに通い、そしたら蹴りに磨きがかかってしまったそうですw
小説『元彼の遺言状』のあらすじと感想【ネタバレ】をCHECKする
あの時の麗子、かっこよかったですけどね。(頭突きは不格好だったのかもしれないけど、鞄をゲットしたところまで含めてかっこよかった✨)
『元彼の遺言状』で上記のアクションシーンがあるとしたら、ぜひ頭突きはブサイクに描いてほしいですw
まとめ
この記事では、新川帆立さんの小説『倒産続きの彼女』のあらすじと感想を書いています。
最後まで読んでくださりありがとうございました♪
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