原作

ドラマ『元彼の遺言状』原作のあらすじと感想・相関図【ネタバレ】

2022年4月11日スタート!
フジテレビ月9ドラマ『元彼の遺言状』✉

この記事では、ドラマの原作である新川帆立さんの同名小説『元彼の遺言状』のあらすじと感想を書いています。

【ネタバレしています!】

高飛車で気が強いけど、いつでもブレることなく真っ直ぐな剣持麗子のファンになること間違いなしの素晴らしい作品です!

綾瀬はるかさんで実写化されることもとっても楽しみ♪

何度も読むと、細かく張り巡らされていた伏線に気づいて嬉しくなります。

この作品の魅力である、麗子の細かい台詞や心理描写までは紹介しきれないので、あらすじを書いておいてなんですが、原作を読むことをおすすめしますw

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Contents

『元彼の遺言状』登場人物

剣持 麗子(けんもち れいこ)

28歳。山田川村・津々井法律事務所に勤務する渉外弁護士。
とにかくお金が好きで高飛車だけど、それだけの女ではない。

森川 栄治(もりかわ えいじ)

麗子の元彼。大学在学中に3ヶ月だけ付き合っていた。
イケメンでナルシスト。
森川製薬の御曹司。
30歳で死去し、奇妙な遺言を残す。

篠田(しのだ)

麗子と栄治と交友が深かった大学の先輩で、栄治とは小学校からの幼馴染。
父親は小さな貿易会社を経営している。
栄治を殺した犯人は自分だと言って、麗子に代理人を依頼する。

津々井(つつい)

麗子の上司で事務所創設者の一人。

剣持 雅俊(けんもち まさとし)

麗子の兄。厚生労働省で新薬の許認可を担当する部署に勤めている。

優佳(ゆうか)

雅俊の婚約者。地味だけどウサギのような可愛らしい女性。

森川 紗英(もりかわ さえ)

栄治の従妹で、定之専務の娘。
栄治には親族以上の感情を抱いている。栄治亡き今は堂上先生が気になっている。

森川 拓未(もりかわ たくみ)

栄治のいとこ。紗英の兄。
森川製薬の次期リーダーとも言われる野心家。

森川 雪乃(もりかわ ゆきの)

拓未の妻。栄治の元カノ。

森川 金治(もりかわ かねはる)

森川製薬代表取締役社長で、栄治の父親。
小ぶりのブルドッグみたいな不細工。

平井 真人(ひらい まさと)

森川製薬取締役副社長。
森川製薬の大株主である外資系投資会社「リザード・キャピタル」から送り込まれた雇われ経営者。
40歳前後。
母子家庭で育ち、学生時代に起業して一財産築いたやり手。

森川 定之(もりかわ さだゆき)

森川製薬取締役専務。
拓未と紗英の父親。

森川 銀治(もりかわ ぎんじ)

栄治の叔父。
結構稼いでいるユーチューバー。
栄治の奇妙な遺言を世の中に拡散する。

村山 権太(むらやま げんた)

栄治の顧問弁護士。
「暮らしの法律事務所」を一人で切り盛りしている。

バッカス

栄治の愛犬。

堂上先生

栄治の隣人で獣医。バッカスの世話をしている。

堂上 亮(どうじょう りょう)

堂上先生の息子。

原口 朝陽(はらぐち あさひ)

栄治の専属看護師であり、元カノ。

森川 富治(もりかわ とみはる)

栄治の兄。
体調の優れないブルドッグみたいな見た目。
大学で文化人類学を教えている。
森川製薬の株を持たず、経営にもノータッチ。

浜田先生

栄治の主治医。

森川 真梨子(もりかわ まりこ)

金治の姉で、拓未と紗英の母。

栗田 知世

村山弁護士のマドンナ的存在だった女性弁護士。
依頼者の相手方に刺されて死亡。

信夫(のぶお)

麗子の恋人。
電子機器メーカーで研究開発職に就いている。

美代(みよ)

森川家の家政婦だった女性。

古川(ふるかわ)

麗子の後輩弁護士。
婚約中の彼女には200万の指輪を渡した。

 




『元彼の遺言状』登場人物相関図

篠田を忘れていましたw

麗子の右斜め下あたりに入れてあげてください(頭の中で)

 

『元彼の遺言状』あらすじ

第一章 即物的(ザッハリッヒ)な世界線

剣持麗子という女

記念日デートで恋人の信夫から贈られた婚約指輪に、

「よくもカルティエでこんなに小さいダイヤが買えたわね?平均予算が40万だとしたら私は120万円の指輪が欲しいの!お金がないなら内臓でも何でも売ってお金を作ってちょうだい!」

と文句をつけ、退席した剣持麗子。28歳。

その足で職場へ向かい、後輩弁護士の古川が婚約者に贈ったのがハリーウィンストンの200万ちょっとの指輪だと聞いて納得しますw

翌日。上司からボーナスの大幅カットを伝えられた麗子。

その理由は、麗子の上司で事務所創設者の一人である津々井曰く「剣持先生はよく切れるナイフみたいな状態で歩き回っているから、ギラギラした感じが怖いという人もいる」。

要するに「チームで働くのにふさわしくないから態度を改めよ」ということでしょうか。

お金がほしくて人の2倍も3倍も働いている自負のある麗子は到底納得できません。

「こんな事務所、辞めてやる!」

と啖呵を切って飛び出します。

しかしカフェで一息ついていると色々な思いから寂しさがこみ上げ、誰かに連絡したくなりました。でも麗子に女友達はいませんw そんな時ふと思い出したのが森川栄治。麗子の大学時代の元彼です。

勉強もスポーツもできないけど、とにかくイケメンだった栄治。3ヶ月だけ付き合って、栄治の浮気で別れたような気がします。

ちょうどいいや…と、麗子は栄治にメールを送りました。

「久しぶり!元気?」

しかし、その日に返信が来ることはありませんでした。

ちなみにお仕事の方は、津々井先生の計らいで「とりあえずしばらくお休み」ということになりました♪

実家へ

数日間のんびりと過ごしていた麗子は、兄・雅俊の婚約者との顔合わせのため実家へ行くことに。

不仲というほどではないけれど、実家へ行くのは気が進まない麗子。

婚約者の優佳は地味だけど可愛らしい、雅俊にはもったいないくらいの女性でした。

そそくさと後にした実家からの帰り道、森川栄治からメールの返信が来ます。しかしそれは栄治本人からではなく、栄治の世話をしていたという人物から栄治の訃報を伝えるものでした。

さすがに驚きを隠せない麗子。色々な思いが頭を巡る中、大学の先輩で栄治とも交友が深かった篠田にメールを送ることにします。

篠田からの依頼

篠田の方でも栄治のことで相談があったらしく、二人は久しぶりに会うことになりました。

篠田から見せられたのは、栄治の叔父であるユーチューバーの銀治が公開した動画。

それは森川製薬の創業者一族が集まり、栄治の遺言が発表される場面を映したものでした。麗子もこの時まで知らなかったのですが、栄治は森川製薬の御曹司だったのです。

栄治の遺言は以下のとおり。

  1. 僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る。
  2. 犯人の特定方法については、別途、村山弁護士に託した第二遺言に従うこと。
  3. 死後、3ヶ月以内に犯人が特定できない場合、僕の遺産はすべて国庫に帰属させる。
  4. 僕が何者かの作為によらず死に至った場合も、僕の遺産はすべて国庫に帰属させる。

篠田によると、栄治はうつ病を患い、ここ数年は軽井沢の別荘で一人静養していたとのこと。そしてインフルエンザで亡くなったようです。

インフルエンザが原因であるなら、遺言の最後にある「何者かの作為によらず死に至った場合」にあたるのでは?しかし篠田は言いにくそうにしながらも、栄治が亡くなる一週間前に会っていたこと、その時篠田はインフルエンザの治りたてだったことを話したのでした。

この場合、篠田は、60億とも言われる遺産をもらうことはできるのでしょうか?

篠田がわざとインフルエンザを移したとしたら、栄治を殺した犯人と言えるかもしれません。でも篠田としては当然、殺人罪で逮捕されるのは避けたいところです。そのためにも遺言にある「犯人の特定方法」を確認する必要がありますが、この遺言自体が「公序良俗違反」による無効となる可能性もあります。

そもそも栄治はどうしてこんな奇妙な遺言を遺したのでしょうか。

篠田の目的はお金…はもちろんもらえたらいいんだけど、それだけではなく、栄治に何が起こったのか本当のことを知りたいということでした。

篠田の父親は小さな貿易会社を営んでおり、森川製薬とは直接の取引はないものの、顧客を紹介してもらったり何かと引き立ててもらってきた関係だったため、栄治の葬儀にも当然花を出したりするかと思っていましたが、篠田の父は今後森川家とは付き合いを控えるように言ってきたと言うのです。

何かがおかしいと感じた篠田は、麗子に代理人になって調べてほしいと頼みます。

割に合わないと一旦は断ったものの、ふと気になって色々と調べた結果、栄治の遺産はざっと見積もっても時価総額1080億円であることが判明。

遺留分やら相続税やらを差し引いても、麗子に入ってくるのは…150億!

俄然やる気が出た麗子は篠田にメールします。

「この間の話、やっぱり引き受けることにした。完璧な殺害計画をたてよう。あなたを犯人にしてあげる」

 

 

第二章 中道的(メソテース)な殺人

第二遺言書

第二遺言書に書かれていた、栄治を殺した犯人を特定する方法。

それは森川製薬の

  1. 森川金治(社長)
  2. 平井真人(副社長)
  3. 森川定之(専務)

の3人全員が犯人だと認めた人を「犯人」とする、というものでした。

栄治は犯人が刑事罰を受けることを望んではいないから、関係者全員に守秘義務を課し、選考内容は警察に漏らさないようにすると書かれています。

これが本当ならば篠田が逮捕されることはなさそうです。

そうなると気になるのはやはりこの遺言が法的に有効なのかどうか。麗子はこの相当風変わりな遺言も、多少の理屈をこねればクリアできるかもしれないと考えているようです。

「セロハンテープと理屈は何にでも付くのよ」

これは津々井先生の受け売りのようですが、とにかく、法的なことはどうにでもなるけれど、問題は森川製薬がこんな珍妙な遺言に本当に付き合う気があるのかどうか。

この件は今やワイドショーでも特集が組まれ、森川製薬の株価にも悪い意味で影響を与える事態になっていました。

さらに、奇妙なのは遺言の内容だけではなく、栄治が「これは僕にとって、犯人への復讐だ」と記していることです。

与えることは奪うこと。犯人は僕があげた財産で一生暮らすことになる。つまり、僕の支配のもとで、僕の亡霊に付きまとわれながら、過ごすわけだ。

栄治は犯人以外にも、お世話になった人たちや元カノたちにも遺産を分けてくれるようです。

その遺産分けを担当するのは、長野県で「暮らしの法律事務所」を営む村山権太という弁護士で、森川家の人間が3人以上同席の上行われることになっていました。

周囲の人間を巻き込んだ大がかりな遺言に首をかしげる篠田。栄治は大げさではあったけれど、人を振り回すようなタイプではなかったようです。麗子もこれには同意。栄治は優しい男でした。

さらに気になるのは遺言書が作成された日付。

第一遺言書は1月27日。第二遺言書は1月28日。そして栄治が亡くなったのは1月30日未明。

タイミングが良すぎます。まるで殺されることを予期していたかのような…。

麗子は栄治の死亡診断書を手に入れるよう、篠田に指示していました。親族以外の篠田が死亡診断書を手に入れる方法。それはやはり「金」です。栄治の主治医・浜田先生は院長選が近くて何かと入り用だった模様。

篠田が浜田先生を買収できたという事実から、犯人選考会の攻略法を理解した麗子。早速選考会にエントリーします。

犯人選考会

颯爽と森川製薬本社ビルに入った麗子は、①森川金治社長、②平井真人副社長、③森川定之専務と対峙します。

金治は栄治の父で、定之は金治の姉の婿。この二人は森川一族の人間ですが、互いに派閥を作って対立しているようです。

一方、副社長の平井は森川製薬の大株主である外資系投資会社から送り込まれた雇われ経営者で、無能な森川一族を追い出したいと思っているようです。平井は相当やり手のようで、普通に投資会社で複数の企業相手にアドバイザー業務をこなしていれば大金を稼げるのに、なぜ森川製薬の副社長に収まっているのか。森川製薬の経営陣について調べつくした麗子は疑問に思っていたのでした。

とりあえず匿名のクライアントAの代理人として、栄治の死亡診断書と篠田のインフルエンザの診断書を並べ、篠田が故意に栄治にインフルエンザを移したと説明する麗子。

同じように「インフルエンザを移した」と主張する犯人候補は少なくないらしく、金治は「金の亡者め」と悪態をついてきます。

しかしここからが麗子の考えた攻略法。

栄治の財産が犯人に譲渡されるということは、森川製薬の少なくない株式も犯人のものになるということ。つまり「犯人選考会」=「新株主選考会」と考えることができるのです。

麗子が、対立している3人にとって一番良い株主になるために考えてきたのが「マッスルマスターゼット」という、森川製薬が発売を予定している新薬に関する提案でした。

これは森川製薬がゲノムゼット社というベンチャー企業と共同開発した、最新のゲノム編集技術が盛り込まれた筋肉補助薬です。マッスルマスターゼットを静脈注射することによって、遺伝子情報が編集され、筋肉のつきやすい遺伝子に変異するというものです。(こわい)

新遺伝子が子世代へ直接引き継がれるリスクが不明瞭だったため、生殖活動を行う見込みのないシニア向けに発売すると発表していました。

これにより低迷していた森川製薬の株価は一気に高騰。定之専務が主導して進めているこのプロジェクトを、金治と平井にとってもうまみがあるように調整したのが麗子の提案だったのです。

森川紗英

平井副社長は麗子の提案に賛成しますが、金治は顧問弁護士に相談したい様子。しばらく待たされることになった麗子は、会社のカフェテリアへ。

コーヒーを片手にぼんやりしていると、兄の婚約者・優佳から電話がかかってきました。

優佳は雅俊の浮気を疑っているようです。最近帰りが遅く、出張も増え、ポケットから帝国ホテルのレシートが出てきたのだとか。

雅俊に限って浮気なんてwwと一笑に付す麗子。

その時、「あなたが剣持麗子ねっ!」とすごい剣幕で一人の女が現れました。森川紗英です。

紗英は定之専務の娘であり、栄治の従妹。栄治に親族以上の感情を抱きながらも、親族であるがゆえに深い関係になることもできず、リスト化された栄治の元カノたちに敵対心を持っているようでした。

麗子は紗英の立場や性格から、この面倒な女を敵に回さない方が得策だと思ったようです。

元カノたちへの遺産分けである軽井沢の物件は別にいらないかなーと思っていましたが、紗英が森川家の人間として参加すると聞き、麗子も行くことに決めたのでした。

結局、麗子の提案は、定之専務が反対したため保留になりました

 




第三章 競争的贈与(ポトラッチ)の予感

軽井沢の別荘へ

遺産分けのために軽井沢の別荘にやって来た麗子。

動物に嫌われがちな麗子は、別荘にいた栄治の愛犬・バッカスにめちゃくちゃ吠えられますw

隣に住み、バッカスの世話をしている獣医の堂上先生と息子の亮くんも登場。堂上の妻・真佐美は4年前、病気で亡くなっているようです。

栄治の兄である森川富治も立会人として来ていました。顔はブルドッグみたいだけど、栄治に似た美声の持ち主です。

富治は金治社長の長男でありながら、森川製薬の株も持っていなければ経営にもノータッチ。大学で文化人類学を教えているらしく、麗子に『ポトラッチ』の話をしてきます。

ポトラッチとは、日本語で言うと競争的贈与。隣り合う二つの部族があり、お互いに贈り物をしあうとします。これには貰ったもの以上のものを返さなければならないというルールがあって、贈り物を続けていくとどちらかが返せなくなり、その部族は潰れてしまいます。

相手を潰すことを目的としたこの不思議な風習は、世界各地で見られるといいます。

富治は、このポトラッチ現象が個人間でも行われている気がすると言っていました。例えば命を助けてもらうというような大きすぎる贈り物をもらったら、その恩義をどう返して良いものか途方にくれると。

実は富治は生まれつきの難病を患っていて、症状を改善するためには骨髄移植をするしかありませんでした。しかしドナーが見つからない。そこで両親は富治を救うため、ドナーになれる兄弟を作ったのです。それが栄治でした。

栄治のおかげで元気になった富治。この恩をどう返せば良いのかとても苦しんだと言います。富治がたどり着いた結論は、自分の財産を全部栄治にあげることでした。

それで富治の気持ちは吹っ切れたものの、その頃から栄治の体調が悪くなります。いとこの森川拓未が切れ者で野心家でもあるため、直系の栄治よりも森川製薬の時期リーダーにふさわしいとか言われているうちに、栄治はうつ病になってしまいました。

さて。栄治の元カノリストには結構な人数の名前がありましたが、遺産分けに現れた元カノは、

  1. 麗子
  2. 原口朝陽(栄治の専属看護師)
  3. 森川雪乃(森川拓未の妻)

の3名。

森川拓未というのは、栄治のいとこで紗英の兄。つまり定之専務の息子です。雪乃は拓未の妻でありながら、栄治の元カノとして遺産分けの場に現れるという、強心臓の持ち主なのです。

参加者たちが外に出て敷地の境界線を確認していると、またしてもバッカスが麗子に吠えます。

堂上先生と亮くんも来ました。亮くんが左利きを矯正されているところ見て、栄治も子供の頃右利きに矯正されてトラウマになり、家の中でだけは左手を使っていたことを思い出した麗子。朝陽も知っていたようです。雪乃はハッとしたような顔。紗英は栄治が左利きだったことを知りませんでした。

「暮らしの法律事務所」へ

その頃、「金治と顧問弁護士が遺言状の原本を見るために村山弁護士の事務所に向かっている」との連絡が入ったため、麗子は村山とともに「暮らしの法律事務所」に行くことになりました。金治は先日の選考会で麗子の提案に賛成したものの、やはり遺産が第三者のものになるのが嫌だったのか、公序良俗違反による無効を主張する構えのようです。しかも金治が依頼した顧問弁護士というのは、麗子の上司・津々井でした。

村山と麗子が「暮らしの法律事務所」に戻ると、事務所の窓は割られ、栄治の遺言書とちょっとした重要書類を保管していたという金庫が盗まれていました。麗子はすぐ警察に通報します。

やがて金治と津々井が到着し、遺言の原本なき中、向かい合う4人。

麗子は遺言が有効だとする意見書を学者たちから集めたとハッタリをかまし、金治と津々井を追い返した上に、津々井の靴が汚れているのを見つけ、「奥様は磨いてくださらないのかしら。もしかして、ご家庭に不和があるのでは?」と挑発までしました。

「男のプライドを傷つけると末代まで祟られる」と言い、デスクに置かれたタバコを吸った村山は、咳き込み、苦しそうに顔を歪め、やがて動かなくなりました。

第4章 アリバイと浮気のあいだ

村山弁護士の死

そこへ麗子が呼んだ警察が到着。

村山が口にしたタバコには毒物が塗られていたようです。

第一発見者であり、死の間際まで一緒にいた麗子は容疑者として疑われ、留置所に留め置かれそうになりますが、条文や判例を駆使してごね続け、釈放を勝ち取りますw

夜も遅かったため、この日は拓未と雪乃の家に泊めてもらうことになりました。

そこで雪乃から「1月29日の深夜何をしていたか」と思いもよらない質問をされます。仕事をしていたはずだと答える麗子。しかし雪乃は納得しません。実は拓未のスケジュール帳に「1月29日 20時 帝国ホテル 剣持さん」と書かれているのを見つけてしまったのです。

本当に何も心当たりがなくて困る麗子。

しかし雪乃も引きません。最近無言電話や、ポストにナイフが入っていたりといった嫌がらせを受けていると言います。

「そんな回りくどい嫌がらせを、私がするわけないじゃない!」という非常に説得力のある一言で、やっと雪乃も納得したようですw

帝国ホテル…剣持…考えていたら何か閃いた麗子。馴染みの探偵事務所にメールを打ち、この日は眠りにつきました。

原口朝陽

翌日、東京へ戻る新幹線に乗ろうとしたところで、警察に呼び止められた麗子。

警察は麗子が栄治を殺した犯人選考会に参加していたことを知っていた上に、一度は病死と判断された栄治の死因について再度調べ直しているようでした。

誰かが警察に新たな情報を話した…?

麗子は軽井沢に戻って、警察の事情聴取を受けたと思われる原口朝陽に話を聞きに行くことにします。

朝陽は亡くなった栄治のエンゼルケアを担当していました。エンゼルケアとは、亡くなった人の身体を綺麗にすること。その時朝陽は栄治の左腿の内側に注射痕があるのを見つけ、栄治の主治医である浜田に上申しましたが、なぜか揉み消されてしまいました。院長選が近かったので、トラブルを避けたかったのかもしれません。

朝陽も自分の生活がかかっていたので、その時は黙っていることしかできませんでした。でも昨日、村山弁護士のことで刑事と話す機会が与えられ、ここで言わなければ看護師としても栄治の恋人としても失格だと思って、注射痕のことを話したそうです。

さらに朝陽は、別荘で麗子と富治が犯人選考会の話をしているのを聞き、それも警察に話していました。

その上で、麗子に「栄治を殺した犯人を一緒に捜してほしい」と言い出します。

依頼人を守るのが麗子の使命。警察が介入した今、一番最悪なのは、栄治の死因がインフルエンザだと判定され、篠田が依頼人だとバレること。篠田が刑事罰を受けることは避けなければいけません。

麗子は朝陽に協力することにします。

雪乃の告白

東京に帰りそびれた麗子はまた雪乃に泊めてもらうことにしました。

朝陽によると、栄治の遺体の第一発見者は雪乃と、栄治の伯母である森川真梨子。その時の状況を雪乃に聞きますが、しどろもどろ…何か隠していると直感した麗子は、栄治の注射痕のことを話します。

観念したように「私が殺した」と言い出す雪乃。

栄治は自分でマッスルマスターゼットを投与し、その副作用で死んだ。そして栄治がマッスルマスターゼットを投与したのは自分のせいだと。

雪乃はうつ病になった栄治を捨てて拓未と結婚したのですが、栄治のことが心配ではあったようで、早朝にこっそり栄治の別荘に忍び込んで様子を見ていたそうです。雪乃の家は栄治の別荘から歩いて5分ほどの場所にあるのです。睡眠薬を飲んでいた栄治は早朝に目を覚ますことはなく、雪乃は栄治の無事を確かめるついでに周辺を少し掃除したりしていたようです。

1月30日の朝もいつものように栄治宅を訪れると、布団は乱れ、手には注射器が。それがマッスルマスターゼットだと気づいた雪乃。二人が別れ話をした時、雪乃はうつ病が原因だと言えなくて「筋肉のない男は嫌い」と言ってしまったのだとか。その後すぐに結婚した拓未が筋肉質だったのもあり、栄治は「男はやっぱり筋肉だよなあ」と漏らしていたらしいと言います。

あまりにアホらしい理由で閉口する麗子。

雪乃がパニックでウロウロしていたところに、栄治と約束していた真梨子がやって来ます。マッスルマスターゼットは真梨子の夫である定之専務と息子・拓未の肝煎りのプロジェクト。その副作用で人が亡くなったと公表されることは何が何でも避けなければいけないと思った真梨子は、雪乃と共謀してこれを隠蔽することにしたのでした。

雪乃はこのことを全て警察に話すと決意。

翌日、警察の駐車場で雪乃を待っていると、ちょうど村山弁護士の件での事情聴取を終えた富治が出てきました。麗子と朝陽に話したいことがあると言うので、雪乃を家に送り届けた二人は栄治の別荘へ。

富治は栄治を殺した犯人は拓未であると思っているようです。栄治が死んで一番得をするのは、仕事上のライバルだった拓未だと。

栄治は拓未に対してポトラッチを仕掛けたのではないか。

返しきれない大きな恩を相手にかぶせて、それに対する罪悪感やうしろめたさで相手を精神的に蝕むところにポトラッチの本質があるのだと言う富治。

でも栄治から拓未の話を聞いていた朝陽は、二人の仲が悪かったようには見えないと言います。

麗子も、拓未が犯人なら自分が関わっているプロジェクトの商品であるマッスルマスターゼットを使うわけないと思いますが、富治はだからこそだと言います。自分が一番疑われない方法を選んだんだと。

その時、またしてもバッカスが麗子に向かって吠えてきました。

亮くんが左手でリードを持っているのを見て、麗子は気づきます。家では左利きだった栄治が自分でマッスルマスターゼットを打ったのなら、左腿に注射痕が残るわけがない…

栄治が左利きだということを知っていた雪乃は、栄治が他殺だと気づいていたのではないか。それなのに警察には自分で打ったと供述している。その理由は…拓未を庇うためでは?

雪乃が麗子を泊めてくれた最初の晩、「1月29日 帝国ホテル 剣持さん」のスケジュール表を見せてきたのは、拓未が犯人ではないというアリバイを確認したかったのかもしれません。

麗子が思いを巡らせていると、先日調査を依頼していた探偵事務所から、麗子の兄・雅俊が大学で拓未と同一のゼミに所属していたという報告メールが届きました。

そういえば以前、優佳が雅俊のポケットから帝国ホテルのレシートが出てきたと麗子に電話をかけてきていましたよね。雅俊の職場は、厚生労働省の医薬品の認可を統括する部署なのです。

 

 

第5章 国庫へ道連れ(タグ・アロング)

雅俊の密会

雅俊は1月29日の夜、帝国ホテルで拓未と会っていたことを認めました。

雅俊によると、拓未はゲノム編集に関して先駆的な技術を持つゲノムゼット社を買収し、森川製薬の共同開発でマッスルマスターゼットを完成させました。

最初は拓未が100%持っていたゲノムゼットの株式ですが、もっと資金が必要になり、栄治に出資してもらい、持ち分は50%ずつになりました。

雅俊は拓未から「栄治が遺した遺言のせいでゲノムゼットの株式が国庫に帰属してしまうことになるけど、新薬の許認可は予定通り下ろしてほしい」との相談を持ち掛けられたようです。

麗子は「ゲノムゼットの株式が国庫に帰属する」と拓未が決めつけているようなのが解せませんでした。栄治の遺言に従うなら、栄治を殺した犯人という新株主が引き継ぐ可能性だってあるはずなのに…。

また、その日雅俊が拓未と別れた時間から考えて、拓未が軽井沢にいる栄治を殺せたとは考えられませんでした。

麗子・解任される

依頼人である篠田にこれまでの経緯を報告した麗子。

栄治が本当に殺された可能性が出てきたため、この状況で篠田が犯人になるためには、インフルエンザを移したと言うよりも、マッスルマスターゼットを投与したと主張した方が良いのではないかと提案しますが、篠田はなんと「もう終わりにしよう」と言うではありませんか。

篠田はお金が欲しかったのではなく、本当に栄治に何が起きたのかを知りたいだけだったようです。

クビを言い渡された麗子は抜け殻のような数日間を過ごします。

信夫から「もう少し大きい婚約指輪を購入した」という手紙が届いていましたが、放置していました。郵便物の中には日弁連から毎月届く冊子もありました。亡くなった村山弁護士の面影を探して、記事を食い入るように読む麗子。村山は死の直前、「私とあの子、弁護士。あの子の分まで長生きしてください」と言い残したように思えるのです。

「あの子」というのは、村山のマドンナ的存在で、依頼者の相手方に殺されてしまった女性弁護士です。

新たな依頼者

そんな時、麗子は栄治の叔父である銀治が、盗まれた金庫に懸賞金をかけて捜しているという報道を見ます。

どうやら栄治の遺言書と一緒に金庫に入っているという「ちょっとした書類」は銀治のものだったようです。

そして、麗子が犯人選考会に参加していたことを知った銀治は、麗子に協力を求めてきます。

盗まれた金庫が川底にあることが判明したけれど、指定暴力団のフロント企業がうろついていて回収作業ができないと言うのです。

犯人選考会の件はもうクビになったから関係ないと麗子が言うと、銀治はそれなら自分の代理人になってくれと言い出します。なんと銀治も犯人選考会に参加していたのですが、平井副社長の賛同が得られず、犯人になれていないようです。実現したいことのために金が必要だと言っていました。

でも、また依頼者に裏切られるのはこりごりな麗子。銀治の依頼を断ります。

その時、雅俊の婚約者・優佳から電話がきました。

実は探偵からの報告で雅俊の浮気の証拠も掴んだ麗子でしたが、拓未との密会の事実を聞き出す代わりに優佳には言わない約束をしていました。しかしその後雅俊は花束を買って帰ったらしく、バレたのでしたw

それでも約束は約束なので浮気のことは黙っていると、優佳は「いつも雅俊さんを守るのね」と言います。驚く麗子。優佳によると、雅俊は子供の頃、麗子がいじめっ子から守ってくれたことや、「お兄ちゃんを守るためにべんごしになる」と文集に書いていたことを優佳に話していたのでした。

自分でもすっかり忘れていたこと。

麗子は日頃から「お金が欲しい」と堂々と言ってはいたものの、お金以外のものを求める人たちにどこか引け目を感じていました。善良な人は自分のことを見下しているのではないか…。でも、どんな人間でも法律の前では平等に権利が与えられている、そのことに救われた麗子は、その権利を実現する仕事がしたいと思って弁護士になったのです。

お金以外のものを求める依頼者に共感する必要はない。彼らが求めるものをよく聞いて、プロとして応えれば良いだけ。

暴力団の対応なんてしたことのない麗子でしたが、司法修習の中でやった暴力団対応の研修を思い出しました。

暴力団員役のあまりの剣幕に泣き出す受講生もいた中、トップの成績で研修を終えた麗子w

自分にできることをやろうと決めたのでした。

第6章 親子の面子(ペルソナ)

金庫ゲット

金庫が沈んでいる川にやって来た麗子。

確かにチンピラがうろついていて、簡単には潜れなさそうです。一旦引き上げ、銀治の財力にものを言わせ、後日ヘリコプターで真上からダイバーを降ろすことにします。

この作戦は大成功。チンピラに邪魔されることなく、金庫をゲット。ダイバーの仕事にも感心しました。

余談ですが、麗子は自分とは違う業種の仕事に興味があり、企業案件でも担当者がまとめた会社情報を読むのが好きでした。そこでふと、拓未がゲノムゼット社を買収した時のことを思い出したのです。かなり良い条件で買収に成功したと言っていましたが、それは拓未の手腕によるものだけなのだろうか…。

報酬にはまったく関係のないことなのに、調べようとしている自分に驚く麗子。

ちなみに、金治社長の弟である銀治が森川製薬の経営にまったく関わっていないのには理由がありました。

若かりし頃、銀治は家政婦の美代と恋に落ち、間もなく美代は妊娠します。銀治と美代は結婚しようしますが、銀治の両親は美代を追い出してしまいました。色々なことが重なり、森川一族に嫌気が差した銀治は家出。森川家との交流が再開したのは最近のことのようです。

さて、引き上げた金庫ですが、5桁の暗証番号が二つ設定されていました。一つは村山弁護士の弁護士番号。もう一つがわからないので解錠できないと銀治から連絡を受けた麗子。

ピンときました。「もう一つは“あの子”の弁護士番号に違いない!」

麗子は村山が“あの子”と呼んだ女性弁護士を特定すべく、村山の事務所へ行きます。村山に「事務所を譲る」と言われたとはいえ、鍵も持っていない麗子は破られた窓から侵入するという泥棒のような真似をする羽目に。

しかし収穫はありました。村山が何度も見返したと思われる開きぐせがついた冊子。そこに書いてあった「栗田知世」という名前が村山の言っていた“あの子”だと確信し、弁護士番号を調べ、金庫を開けることに成功します。

中には栄治の遺言状と、銀治の求めていた書類がきちんと入っていました。

二組の父子

銀治が取り戻したかった書類。それは銀治と平井副社長の父子関係を証明する鑑定書でした。

栄治の誕生日パーティーで平井を見かけた銀治は、彼が若かりし頃の美代にそっくりだったことに衝撃を受けたのです。そして平井の使った箸を盗み、鑑定に出しました。そうして平井が自分の子だと明らかになったものの、家出して定職にもつかない自分のような人間が父親だと名乗り出られるわけがありません。

平井が森川製薬に乗り込んできたのは、自分たちを追い出した森川一族に復讐するためだと思った銀治は、(勝手に)協力することにします。

自分が栄治の遺産を引き継ぎ、それを平井に譲れば、森川製薬における平井の発言権が増す…そう思って犯人選考会に参加したのですが、肝心の平井に反対されるという皮肉な事態になっていましたw

そして銀治の書類にはもう一組の父子関係を証明する記述がありました。

それはなんと、栄治と亮くんでした。日頃から亮を可愛がっている栄治を見て、銀治が勝手に調べたようです。(おい)

堂上先生の亡くなった妻・真佐美は、栄治の元カノだったのです。リストにもちゃんと名前がありました。

銀治が栄治に亮との父子関係があることを伝えたのは1月29日。

栄治は亮に遺産を残すために遺言を書き換えようと村山弁護士を呼びますが、翌日の約束を待たずして亡くなったのでした。

黙っていても死期が迫っていた栄治を殺す必要があったのは、遺言を書き換えられたら困る人物…。

麗子は獣医の堂上こそが栄治を殺した犯人だと気づきます。

亮に遺産が入るのなら、父親である堂上にとっても良いことのように思えますが、そこには「お金より大切なものがある」のです。

堂上にとっては、妻の不倫や、亮が栄治の子であることが世間に晒されることが何よりも苦痛だったのではないか。

元カノたちへの遺産分けの日、村山弁護士から真佐美の名前が元カノリストに載っていることを知らされた堂上は、口封じのために村山を殺害。そしてリストが入っている金庫を捨てたと考えると、次に狙われるのは…

逮捕された麗子

麗子は銀治のベントレーを飛ばして紗英の元へと急ぎます。

案の定、堂上は元カノリストのコピーを持っている紗英と会う約束をしていました。呼びつけた警察官に喧嘩を吹っかけながら、二人が待ち合わせをしているという品川埠頭へたどり着いた麗子は、現れた堂上から文字通り身体を張って紗英を守ります。(夜景をバックに激しいアクションが期待されるシーン)

しかし、色々とやりすぎて留置所に入れられてしまいましたw

毛羽立った薄い毛布一枚で寝ることになったけれど、お天道様に恥じるようなことは何もしていないと大の字で眠る麗子!

 




第7章 道化(ピエロ)の目論見

栄治殺しの真相

留置所に入れられた麗子が弁護人に選んだのは、なんだかんだ言っても頼れる津々井先生でした。

「暮らしの法律事務所」で顔を合わせた時、麗子に「靴が汚れているのはご家庭の不和かしら」と指摘されて激怒した津々井でしたが、実はその後、妻をよく観察し、無理をしているように見えたため無理やり病院に連れて行ったところ、初期の胃がんが見つかったのでした。

麗子のおかげで妻の病気を早期発見できたと、感謝さえしている津々井。10日で麗子を自由の身にすると約束してくれました。

違法な毒物を持っていたことで現行犯逮捕されていた堂上は、供述を始めていました。妻が残した日記を見て亮が自分の子ではないと知ったけれど、それを隠して自分の子として育てようとしていたこと。

しかし栄治から亮が栄治の子であること、亮に遺産を残すために遺言を書き換えるつもりだということを聞かされ、その前に栄治を殺すしかないと思ったこと…

堂上は1月30日未明、栄治に塩化カリウムを静脈注射して殺害。マッスルマスターゼットの副作用で死んだように見せかけるため、注射器を握らせます。そうすれば森川一族が隠蔽し、インフルエンザで死亡したように見せかけるだろうと睨んだのです。

その後は麗子の想像通り。妻の不倫がバレないよう、元カノリストを持っていた村山弁護士を殺害し、遺言書一式が入った金庫を川に投棄したのでした。

遺言の真相

残る謎は、栄治があんな回りくどい珍妙な遺言を残した理由。

これには拓未と栄治が半分ずつ株式を所有していたゲノムゼット社が関係していました。

ゲノムゼット社の「株式譲渡契約書」と「法務調査報告書」を読み、全てを理解した麗子は拓未に会いに行きます。

もうすぐ栄治が亡くなって3ヶ月。栄治を殺した堂上は、金治たち犯人選考委員によって「犯人ではない」と決定されたので、栄治の遺産は国庫に帰属することになっていました。

しかし栄治には実子・亮がいると判明したため、栄治がどんな遺言を残そうと、遺留分として半分は亮のものになります。残りの半分は遺言通り国庫へ。となると、ゲノムゼット社の株式はどうなるのか。拓未はそれが気になって仕方がないようです。

そう、栄治の遺言は、ゲノムゼット社の株式を国庫に帰属させるための大がかりな仕掛けだったのです。

平井副社長の勢力に対抗するため、大きな成果を出さなくてはならなかった拓未は、最先端の技術を持ちながら破格の条件で売りに出されていたゲノムゼット社に目をつけ、十分な調査をすることなく買収してしまいます。

案の定、美味しい話には裏がありました。ゲノムゼット社の技術を欲しがる暴力団のフロント企業が拓未と栄治の周りをうろつくようになったのです。ゲノムゼット社の方でもこのフロント企業を邪険にできない弱味がありました。

篠田の父親が突然森川家との付き合いを控えるように言ったのも、この噂を聞いたからだったのです。

雪乃が言っていた嫌がらせも、暴力団によるものだと思われます。

ゲノムゼット社を持て余した拓未と栄治は村山弁護士に相談し、この会社の株式を国庫に帰属させることにします。そうすれば暴力団でも簡単には手出しできなくなるからです。

しかし国庫に帰属させるとなると、マッスルマスターゼットの発売に向けた官庁への根回しに時間がかかります。犯人選考会を設定してその期限を3ヶ月とすることで根回しの時間を確保し、珍妙な遺言で周囲を振り回し注意を引き付けることで、拓未の行動を目立ちにくくする。遺言をシンプルに「国庫に帰属させる」としなかったのは、今回の失敗が露呈し、未来ある拓未のキャリアに傷がつくことのないようにと、栄治がピエロになって拓未を守るという作戦だったのです。

拓未は栄治から受け取った大きな贈り物に潰されぬよう、覚悟を持って森川製薬を発展させるつもりだと言います。

麗子の判断で平井副社長に全てを話しても良い。その場合自分は経営の舞台から降りるつもりだとも。

麗子は拓未の覚悟をしっかりと受け取りました。そして拓未のためにも、自分を拓未の顧問弁護士にした方が良いとちゃっかり持ち掛けますw

結局、麗子はこの件で一円も受け取ることはありませんでした。

「暮らしの法律事務所」はなくなったけれど、村山が担当していた案件は麗子が引き継ぎ、今は「辞めてやる!」と飛び出した山田川村・津々井法律事務所に戻って仕事に邁進しています。

信夫からもらっていた手紙にも返事を書こうと思ったのでした。

 

『元彼の遺言状』原作の感想

ドラマでは2番手として紹介されている篠田ですが、そう、原作では全然出てこないのです!

下の名前すらないよね?

ドラマでは大泉洋さんが演じられ、下の名前も与えられ、栄治の別荘の管理人ということになっているので、存分に活躍してくれることでしょう。

楽しみですね~

冒頭の麗子のキャラが強烈すぎて、「どんなに小さいダイヤだとしてもカルティエの指輪をもらったら嬉しい」と思っている私はこの女が主人公の話についていけるのだろうか…と思ったのですが、読み進めていくうちにそんな心配は吹き飛びました。

麗子は確かに高飛車で気が強いけど、それだけの女ではないのです。

自分に敵対心をむき出しにしてくる相手のことも冷静に観察して、良いところがあれば素直に認めて褒めています。(主に心の中で)

自分に自信があって傲慢にも思えるけれど、それは努力してきたこと自分を認めているからであって、麗子は自分の中にある弱さもちゃんとわかっているのです。

でも信夫への仕打ちはひどすぎましたよねw

信夫は麗子とは関係のないところで揺るぎない自信を持っている男性だから、めげずに指輪を買い直し、再アタックしてきたところがドm…いや素敵でしたw

麗子が警察に食ってかかるところとか、面会に来た兄の言葉尻を捉えて10倍言い返すところは笑えるし、ちょっと優しいところもある麗子のキャラが大好きですw

ミステリーとしても他にないような設定で惹きつけられるし、最後までドキドキしながら読みました。

ドラマ化されると知って、あの役は誰がいいか…と毎日考えているのですがw、とりあえず津々井先生は小日向文世さんで、雪乃は堀田真由さんのイメージです!→雪乃は笛木優子さんでしたね~!妖艶さが増して楽しみです♪

 

▼半年後の麗子もカッコイイ!▼


 

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