日テレ系新日曜ドラマ『霊媒探偵・城塚翡翠』の原作小説『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』(相沢沙呼著)のあらすじと感想を書いてみました。
シリーズは全部で3作。
- 『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』
- 『invert 城塚翡翠倒叙集』
- 『invertⅡ 覗き窓の死角』
この記事では、シリーズ1作目『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』のあらすじと感想を書いています!
書いておいてなんですが、先入観なしでドラマを楽しみたい方は【ネタバレ】は絶対に読まないでください!!楽しみが半減、いや、なくなります。
『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』あらすじ
人気推理作家の香月史郎(こうげつ・しろう)は、ここ数年世間を騒がせている「連続死体遺棄事件」の被害者遺族から「事件の犯人を見つけ出してほしい」と依頼されます。
小説家である香月がこんなことを頼まれるのには理由がありました。
香月が霊能力者と共に数々の事件を解決へと導いてきたという噂が巷で広まっているからで、それは真実でした。
この物語は、香月が霊能力者・城塚翡翠(じょうづか・ひすい)と共に解決してきたそれまでの事件を振り返る形で始まります。
翡翠はその能力によって事件の現場を見ただけで犯人がわかってしまうのですが、それには当然証拠能力がありません。「〇〇が犯人だ」と言っても、証拠がなければ誰も信じてくれませんね。そこで翡翠から得た情報を香月が分析し、論理を組み立て、犯人が犯人たる証拠を固めていくといった共同作業で事件を解決へと導いてゆくのです。
香月は、最初は翡翠の能力に否定的でした。しかし何度も目の当たりにするうちにその力を信じざるを得なく、同時に能力者ゆえに翡翠が抱える孤独にも想いを寄せるようになります。
翡翠はミステリアスな魅力を放つ美女で、おまけに男性が放っておけなくなるようなキュートさも持ち合わせている女性なのです。
惹かれ合う二人が数々の事件を解決していく裏で、鶴丘文樹(つるおか・ふみき)というシリアルキラーが「実験」と称して次々と女性を殺害していくシーンが描かれます。
これが冒頭に出てきた「連続死体遺棄事件」。
香月はついにこの事件の捜査に乗り出しますが…。
『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』ネタバレと感想
読み返してみると、「ここも…」「うわ、ここも…」と張り巡らされた伏線の数々にぞっとします。
ここからはネタバレになるので、まずは原作を読むことを強くおすすめします!!
よろしいですか。まだ引き返せますよ。
ではいきます。
実験と称して何の罪悪感もなく殺人を繰り返す「連続死体遺棄事件」の犯人・鶴丘文樹とは、なんと香月その人だったのです!
ミステリ好きや勘の良い人はすぐ察したのでしょうが、私は当然のように別人だと思っていました( ̄▽ ̄;)
だって、香月は後輩の女性や女子高生に対して優しいし紳士的。もちろん翡翠にも。翡翠への想いは本物でしょーーーーー?
香月の子供の頃の話と、鶴丘文樹の“実験”の内容が一致した時に「やだー!!!」って泣きましたw
そして最初から読み返してみて気づいた、抑えきれない香月の狂気。
香月に好意を寄せていた後輩の女性が殺害された時の香月の気持ち。
×「こんなことになるのなら、もっと早く…自分がこの手で…抱きしめてあげたかった」
〇「自分がこの手で殺したかった」
死に顔が気になるというサイコな理由で女子高生を殺しまくった犯人が香月に言った、「あなたならわかってくれると思った」というような言葉への返答
×「わからないよ」
〇「わかるよ」
香月の本音が脳内で変換できるようになりました。
他にも、溢れ出る翡翠への想いが全部そっち(殺したい)だったのかい!という衝撃。しかもドラマでは瀬戸康史さんが演じるんですよね、この香月を。
さらにこの小説の肝はここからです。
人間は自ら謎を解いたり、秘密を見つけたりすると、愚かにもそこにそれ以上の謎や秘密があるとは考えないものなのです。
これは「霊媒師」としてのミステリアスな翡翠しか知らなかった香月が、たまたま街で「素」の翡翠を見たことで、彼女が本当は超常の力を持て余して戸惑う、ドジだけれど可愛らしい孤独な女性だという秘密を知った、だからそれ以上の秘密はないと思い込んでしまったことを指摘する台詞であり、私たち読者への台詞でもあるのではないでしょうか。
鶴丘文樹=香月という秘密に気づいた私たちは、この作品にそれ以上の秘密があるとは思わないはずです。(私は気づかなかったけどw)
でもこの話にはさらに秘密がありました。それは、翡翠がインチキ霊媒師だということ。
そう、翡翠には霊能力なんてなかったのです。
霊視して得たと思われた情報はすべて翡翠の洞察力・推理力によるもので、それもある意味特殊能力だと思いますが、最後にそれがぜーんぶ説明されます!
全ての事件で、翡翠がどうやって誰よりも早く犯人に辿り着いたのかが。
最初に読んだ時、翡翠の度を越したドジっ子・ぶりっ子ぶりにイライラしかしませんでした。こんなあざとい女いるかぁ!!と。
麦茶をこぼして「はわわわ」と言ったり、いい大人が「わたしったら、ドジっ子で…」と言ったり…いくら美人でもドン引き。「あれれぇ」ってコナンかよとか…
でもそれも犯人を油断させるための演技だったようです。安心しました。
女子高生たちがきゃっきゃと翡翠に制服を着せて際どい写真を撮るシーンや、翡翠が色仕掛け的なことをするシーンは気持ち悪かったです。これはもう妄想でしかない…
最後に翡翠が真実を語るシーンは、いつものぶりっ子も封印されて痛快でした。
そもそも、ミステリ作家(しかも男性)が霊媒を心から信じるという時点でお察しだったのかもしれません。そんなわけないじゃんと。
でも、本当に霊視とか霊媒で解決していたら興ざめだな~とは思いつつ、まんまと騙されましたw
翡翠が本物の霊媒師ではないと明かされてしまった以上、シリーズの2作目、3作目は一体どんなストーリーなんだろう?と思いますよね。
霊媒師という設定がうまいこと活かされて、それぞれの事件の犯人も人間味があってさらに面白くなっていますよ。
まとめ
この記事では、小説『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』のあらすじと感想をネタバレありで書いています。
シリーズの1作目になります。
2作目、3作目の感想もそのうち書きたいと思います♪