原作

『祈りのカルテ』知念実希人著【あらすじと感想】ドラマの原作小説

『祈りのカルテ』知念実希人著
あらすじと感想

玉森裕太さん主演のドラマ『祈りのカルテ』の原作となる医療ミステリ小説のあらすじと感想を書いています。

ドラマは2022年10月8日(土)夜10時スタート!


 

小説『祈りのカルテ』あらすじと感想

研修医一年目の諏訪野良太が、各科を回って臨床の経験を積みながら、将来自分の進むべき道を模索していくストーリーです。

育った環境から、場の空気や人の顔色を読むことが得意な良太。良太の前には秘密を抱えた患者さんが次々と現れます!

ドラマの予告ではやたらと「カルテ推し」ですが、もちろんカルテだけでなく、患者さん本人としっかり向き合って謎を解き明かしていきますよ。

こういうお話にありがちな、職域を超えた「やりすぎ感」も多少ありますが、良太が優しくて押しつけがましくないキャラクターなのですんなりと受け入れることができます。

特に最初に出てきたのが精神科だったのも良かったですね。患者さんと向き合うことが大切な科だと思われますから。

最初の精神科の部分だけ、ネタバレありであらすじと感想を書いてみたいと思います。

精神科 あらすじ

患者:山野瑠香

指導医:立石聡美

良太が担当することになった山野瑠香は、1~2ヶ月に一度睡眠薬を多量に服薬した後自分で救急要請して運ばれてくるという、常連の患者さんでした。

良太は瑠香から話を聞こうとしますが、彼女が出す「拒否」の感情を敏感に感じ取ってしまい、「優しい元夫に会いたいから睡眠薬を飲んだ」「明後日までは入院させてほしい」ということしか聞き出せません。

カルテによると、瑠香は複雑な家庭環境で育ち、水商売をしていた22歳の時に知り合った男性と結婚。しかし些細なことで喧嘩を繰り返し、2年で離婚。自殺未遂で運ばれてくるようになったのはその頃からでした。

睡眠薬の多量服薬は、元夫の気を引きたくてやっているのでしょうか…

2ヶ月に1回、早い時は3週間で、月が替わる頃に入院してくるという、その規則性が気になる良太。

そこへ瑠香の元夫がやってきました。瑠香は夫に会いたいと言っていましたが、夫の方は会いたくないようです。瑠香の容体が安定していると聞くと会わずに帰ってしまいました。

瑠香が自殺未遂を繰り返す原因がわからず行き詰る良太に、指導医の立石は良太が空気を読みすぎていることを指摘します。社交的で気が利くので周囲の評判は良いものの、相手の顔色を伺いすぎるところがある、それはちょっと間違えるとたんに「調子のいい主体性のない奴」になってしまうと。

それは良太も自覚していることでした。育った環境のせいだと。良太の父親は良太が幼い頃に病死しており、その後母親が再婚。義父は悪い人ではありませんでしたが、良太は常に「他人の家にいる」という感覚が抜けず、義父に嫌われないよう、捨てられないようにと気を遣って生きてきたのでした。

相手の顔色を読むということは、患者に寄り添える、患者の気持ちがわかるということ。一見精神科医に向いている特性にも思えますが、行き過ぎると自分が病み、逆に患者になってしまうのだとか。患者に入れ込みすぎる医者は精神科医には向いていないと言われてしまいます。

しかし、そんな良太だからこそ、他の医者がお手上げの瑠香の心を開くことができるのではないか。立石先生は責任は自分が取るから思うようにやってごらんと良太の背中を押しました。




精神科 ネタバレと感想

良太がカルテとにらめっこしていると、瑠香が退院日を毎月「5日」に調整していることが判明。それは瑠香が受給している生活保護費の支給日でした。

ピンときて、元夫が病院に来ていたことを瑠香に告げる良太。瑠香の顔には「恐怖」の色が浮かんでいました。

定職についていないらしい元夫は、瑠香から生活保護費を巻き上げていたのです。金を渡すと優しくなるが、渡す金がなくなると暴力を振るわれる。瑠香はそんな元夫から避難して、また優しい夫に会うために、お金が尽きてから生活保護費が入る5日まで入院しようとしていたのでした。

睡眠薬を多量に飲んだというのは嘘。そのことがバレた瑠香は、良太が止めるのも聞かずに勝手に退院してしまいます。

その夜、救急部の当直をしていた同期で親友の冴木裕也から電話で起こされた良太。なんと瑠香が運ばれてきたと言います。駆け付けた良太が目にしたものは、髪が乱れ、顔は誰かわからないくらい腫れあがった瑠香の姿でした。

瑠香は良太のせいで元夫と決別する決心がついたと笑います。電話で別れたいと告げると、元夫は乗り込んできて瑠香を殴り始めました。しかし瑠香があらかじめ通報しておいたため、途中で警察に助けられたようです。

その後、顔の怪我が治った瑠香は無事退院し、これからは精神科の外来で心の治療を続けていくことに。

瑠香の心を開いたことで精神科に来ないかと誘われた良太でしたが、以前立石先生から頂いた有難いアドバイスを尊重し、丁重にお断りして精神科での研修を終えたのでした。

冒頭にも書いたとおり、「こんなに患者のプライベートに踏み込んで、隠された問題を解決する医者なんていねーよ!」と言いたくなるかと思いましたが、「精神科」という、患者の話を聞くことに時間を割くのが想像できる科であること、良太のキャラクターが押しつけがましい元気系でないことなどのおかげで、抵抗感なく読むことができました。

良太が自分の家庭環境を瑠香のとを重ねているシーンでは、それはちょっと…どころか全然違うと思いましたが。

母親の再婚相手がまともな仕事のまともな人物で、医学部まで出してもらった良太と、家出して水商売で生計を立てるしかなかった瑠香とでは…

「いい子にしてないと捨てられるのでは」と子供ながらに空気を読めた時点で、本人の気質のような気もしますし。でもそのせいでずっと窮屈だったんだろうなとは思います。

医者になっても空気を読んで、人の気持ちに敏感ですが、そういう人にありがちなおどおどした感じは全然しません。ただただいいやつ。しかもドラマでは玉森くん。モテすぎて困りそう。

 




外科・皮膚科・小児科・循環器内科

その後も良太の研修は続きます。

  • 突然手術をやめると言い出した胃がんの患者
  • 入院後に火傷が広がっている?不可解な患者
  • 服薬しているはずの薬の成分が検出されない小児患者
  • 拡張型心筋症を患う女優のVIP患者

それぞれの事案でカルテと、患者本人と向き合い、探偵ばりに解決していく良太。小児科なんかのエピソードは無理があるだろう…ってちょっと思ってしまいましたが、子供が親を想う気持ちに胸が熱くなりました。

そして、研修医ってすごい大変なんだな~と思いました。(語彙力0の感想)

指導医の皆さんもそれぞれに個性溢れる面々で、読みながらその姿が想像できたので、ドラマになるのはとても楽しみです!

最後に良太が選んだ科にも納得。

“医療ミステリ”ということで、不可解な謎を解き明かすシーンはもちろんワクワク。でも患者さんが抱えている病気以外の問題、医者がそこまで一人一人の患者さんをケアするのは現実には無理でも、お話の中だけでもこんなお医者さんがいてくれて良かったな、と思いました。

実際自分が患者の立場になった時にそこまで踏み込まれて嬉しいか…と言われれば、正直わかりませんが。忙しいお医者さんに自分のためにここまでしてもらうのは申し訳ない、もう放っておいてくれと思うかも。だから「研修医」という良太の立場も良かったのだと思いますね。

ちょっと違うけれど、私自身の経験で、子供が入院した時に看護学校の実習生の方がついたのですが、お医者さんより、看護師さんより色々話しやすかったです。本当に些細なこととか、自分の気持ちとか。親身になって聞いてくれてとても救われました。もう10年前の話です。あの時の実習生の方、今頃立派な看護師さんになってるんだろうな。

原作では良太の同期はほとんど出てこないのですが、ドラマではたくさん出てくるようで。そちらも楽しみです♪

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まとめ

この記事では、小説『祈りのカルテ』(知念実希人著)のあらすじと感想を書いています。

玉森裕太さん主演・2022年10月8日スタートの土曜ドラマ『祈りのカルテ』の原作となっています。

玉森さん演じる研修医・諏訪野良太がカルテを通して患者たちの秘密と嘘を優しく見破る「ハートウォーミング・ミステリー」!楽しみですね。